お気に入り短歌&俳句

この日付の朝日新聞朝刊「歌壇&俳壇」より

●来週は証言のため休講とことわりたまひし国史通論(八尾市 吉谷さん)

【高野公彦評:第三首は、先日百歳で亡くなった古代史家の直木孝次郎氏への哀悼の心をこめた回想の歌】

→学者は学者だけと交わるのではなく、そこに学び社会人として巣立つ多くの学生とも接する。前者だけでなく、後者にも響く人柄が、本当の学者としての生き方かもしれない、とも思う。

 

●いつわりの統計信じ大東亜戦争にわれ等狩り出されたり(松戸市 宮坂さん)

永田和宏評:宮坂さん、歴史を通して現在を相対化する大切さ】

→嘘つきは戦争のはじまり、と言ったのは誰だったか・・・。ゾッとする。

 

●名も知らず旅に買いたる水字貝(すいじがい)火事を逃れ上座に据える(福岡市 松本さん)

→「水字貝」?歌の内容を勝手に推測すると、旅のお土産に貝を組み合わせたオブジェがあり、その後不幸にして家が火事に遭いそうになった際、危うく難を逃れた。そこで初めて、このオブジェに火難を避けるという意味があることを知り、上座に据える、ということだろうか。

ここまで想像して、ネットで調べてみた。なんと、水字貝という貝がほんとうに居るらしい!

 

●こんなところに卵を産んで暮れかぬる(柏市 藤好さん)

【高山れおな評:藤好さん。若い鳥の危うい巣作り。字余りと散文的な叙法で春日遅々の情をもりあげる。】

→危ういところに巣を作る様子を想像して「あ~」と思う。そこを通るたびに見上げる自分、さらに、前を通る人が同じ方向を見上げてるのを見て勝手に親近感を抱く自分、そこまで想像してしまう。

 

●うかれ猫年少さんに叱られる(霧島市 久野さん)

→これも高山れおな選。金子兜太さんの後に入った新しい選者さんだが、この人の選ぶ句がなんか自分のツボにはまることが多くて、楽しい。

「うかれ猫」もうこれだけでぐっとくるよ!